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<<   作成日時 : 2008/05/09 21:07   >>

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 ここのところ、 「ナースのお仕事」話題をよく書きますが・・・

 「インオペ」という言葉があるのを、ご存知ですか?私たちが使いたくない、口にしたくない言葉の一つです。この言葉を使うとき、本当に本当に無力感で一杯になります。看護師の私がそう感じるのだから、きっと先生ならもっと骨身に沁みてることだと思います。(このブログを先生と呼ばれる人が読んでいたら、きっと分かっていただけるかと思います。)

 この言葉、語源は私も不明ですが(英語?)、簡単に言えば手術をしようとしてお腹を開けたけれど手がつけられないので手術が出来ない、という状態の事です。

 最近の検査技術は格段に向上していて、小さな小さな病巣まで分かるようになりました。乳癌の検査技術の進歩などがいい例ですね。MRIやCTも、随分時間が短く、且つ正確に映像として体の中の様子を提供してくれています。そしてベテランの先生達の経験に裏打ちされた感覚が合わされば、かなりの確率で手術後の様子を想定することが出来ます。ただし、矢張り私たち医療者は神様ではないので、「絶対」ということはないんです。

(この間の当直で一緒になった小児科の先生も、「体温を37度に下げてくれる解熱剤はないんだ!」としきりにお母さんに説明してました。「そんな魔法の薬は世の中にはない。」とね。この原理を知りたい方は個人的にうまうままで。先生の書いたベクトル図を使用してご説明しましょう!何回も見たから、書けるもんね!)

 その最新の技術を持ってしても、お腹の中に種をまくように広がった、播種性の癌転移を見抜くことは出来ません。種と称されるほど小さな癌細胞、CTにも写らない小さな「悪者」・・・それが今日手術を受けた患者さんのお腹には一杯ありました。
 検査結果では、もしかしたら摘出できるかもしれないという予測を立てて望んだ手術でした。どんな医者にも、きっとブラック・ジャックにも、画像に写っていないものを「ある」と断定は出来ません。「もしかしたら」という最悪の予想も立てながらも、希望の光を消さずに果敢に立ち向かった手術。

 結果は残念ながら黒とでました。誰しもがそれと分かる播種性腹膜転移。腹膜に限らず、腸管に散った黒い種。

 開腹した途端に見えた先生の表情が、今でも思い浮かべられます。臓器に見つける「ソレ」と分かる転移の影は、看護師ですら凍りつきます。こんな仕事をしていなければ、絶対見ることがない「癌細胞」の生きた姿。それは禍禍しくも繊細・・・触れれば弾けて癌細胞を広げてしまう、パンパンに膨らんだ風船のような恐ろしさ・・・。
 手の付けようがないという言葉を発する先生の心中を思うと、切なくなります。勝算があった手術のはずだったのに・・・と。

 この場合、家族には事前に最悪の事態をインフォームド・コンセントしているとはいえ、最終的な確認として状態をその場で説明します。手術室まで出向いてもらい、可能であれば手術場そのものへ足を運んでもらい、実際に開腹した状態での臓器の様子を見てもらって説明します。
 ご家族を手術室で待っている間に流れる重苦しい空気。これからここへ不安を抱えながらやってくるご家族の事を考えても、どうしても重さがなくならないのが事実。互いに顔を見合わせながら、出るのは苦笑いだけ・・・。
 
 ダメダメ!こっちがしっかりしなきゃ!と思いつつも、一緒になって泣き出しそうな思いを抱えて聞いています。素人みたいに「何とかならない?」と入れ替わり立代わり様子を除きに行くモグラーず達。皆同じ思いで一つの手術の成り行きを見守っています。
 もしかしたら姑息的手術の手段を模索している間に、パッと閃きが生まれるかもしれない!という希望を託して、先生の手元を眺めています。

 インオペの場合は、その場で何もせずにお腹を閉じます。どう手を下しても、予後が変わらないどころか縮めてしまう可能性もあるんですから。

 今日の希望は、それでも「痛み」や「苦しみ」をとる手段を講じたことです。口から食べて排泄物を出せられる状態を作ること、それが今日の希望。この手術で患者さんの「完治」は求められないけれど、「Quality Of Life」の向上を目指した手術です。
 ある程度の「勝ち目」をもって望んだ手術に、外科医としてそうすることしか出来ない先生の悔しさは計り知れませんが、この先生はこの患者さんの全てを両腕にしっかりと抱きしめていける先生です。患者さんの為に何が出来るか、きっとその答えを出してくれるはず。

 とてもとても、頼りになる先生ですから!
 
 泣き出しそうな空気に包まれた手術場に、先生の大きな指示の声が届いていました。
 先生にはまだ、頑張る力が残ってます!私たちはそれを応援してます!支持してます!

 頑張れ、先生!

 頑張れ、患者さん!

 私たちと一緒に、頑張ろう!


                           

 実は私、この「インオペ」に直接介助としてついたことがあります。それも、肝臓癌の手術で、開腹後に肝臓が見えた時点で「もう駄目・・・」と判断され、ものの10分もしないうちに閉腹になったのです。このときはまだこの手術室の仕事について短かったので、「えっ!?」と思う間もなく手術が終わりました。血の汚れの一つもない綺麗なままの特殊器械を眺めながら、「何だったんだろう・・・」と途方に暮れたような気分になったのを思い出します。その正体が、こういった「無力感」だったんだなと今は思う次第。

 未熟な時には気づかなかったことが、今の私にはとっても大きな事として感じられています。それだけ広く見渡せるようになったのかな。それだけ落ち着いていられるようになったのかな・・・。

 最近どんなことにも涙腺が弱いのは困りものだけど


 何だか難しい記事ばっかり書いてるな、最近・・・

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