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<<   作成日時 : 2008/09/29 23:48   >>

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 月曜日のまったりした時間でした。静かな時間が過ぎていき、静かに時代にも幕が下ります。

 一つの時代が、終わるんです。

 今日、9月末で転勤されることになった外科医の送別会に出席してきました。地元の小さなホテル(?)で行われた、院内の送別会には、人望厚い先生らしく、暖かい感じの会でした。

 私が手術室に異動になったときもそうでしたが、私が新人として病院に入社した時にはすでに、外科の看板の一つを背負っておられた先生です。以前にも患者さんの命に呼びかけるような医療をする先生として紹介したことがあります。「インオペ」の記事での手術も、この先生が執刀でした。
 
 兎に角兎に角、患者さんと共にあった医師です。私が凄いなと感心する小児科の先生を寄り添う医療とするなら、この先生は寄り添って歩く医療です。自分が医師であること、自分が頑張ればいつか誰かを救える事、救う為に医学が発展することにも意欲的でした。

 反面、決して己の技量と医学の限界を過信しない先生でもありました。

 私がこの先生を表現する時、そんな言葉が浮かびます。自分の限界も現在の医学の限界も、きっちりと知っていらした先生です。そして、待ちつつも努力していればきっと、病気を治せる日が来るのだと信じていました。その技術を自分の手に掴もうと、いつだって前向きでした。
 それをちっともおくびにも出さず、

「僕ね、僕ね!」

 といってスタッフを励まし、笑わせてくれる先生でした。

 覚えています。

 手術室に配属になって初めての開腹手術。何にも分からないまま言われるままに動くしかなかったあの頃、先生の手に速さについていくのが精一杯で、術野なんか見れていなかった頃でした。
 今でこそ見当違いだと分かるのですが、手術中私が手渡した器械をじっと見られ、丁寧に器械台の上に返し、

「今○○をしてるんだよ!!!!! みてりゃ分かるだろう!!!!」

 突然大声を出されました。

「・・・すいません・・・・

 小さく謝りながら、思いました。
 『私は初めてなんだから、分からないよ・・・・』
 胃がどこなのか、胃の周りに張り付いているものがナンなのか、大腸と小腸の違いすら分からないペーペーでした。その時は単純に恐い先生だなーと思ったし、泣き出しそうなくらい哀しかったのですが、手術が少し分かるようになった時、ふと気付きました

 先生にとって看護師も、術野を一緒に操作しているチームの一員なんです。

 分からないなんていってられないほど、先生はあの時私の器械出しを必要としてくれていたんです。お前もこの手術に関わっているんだから、真剣になれ!と言う事。勿論真剣でした 真面目に必死に向き合っていました。けれど、それが患者さんの為にという前書きをすっ飛ばしていたんでしょうね 
 けれど、先生にとってはそんなの当たり前。自分と同じスタンスで手術に向かっているものとして、ペーペーの私を扱ってくれていたんです。
 
 なるほど・・・・ この先生の手術に何度となくついていると、よく分かります。いかに患者さんの身体の為の『外科』なのかということ。この先生の手が素晴らしいというわけではないのですが、臓器を扱う優しさは一級品です。器械だしにも慣れ、先生の手癖も分かるようになると、『チームの一員』であることをひしひしと感じることが出来ました。

 確かにそうです。私たち器械だし看護師も、先生たちの手を通して患者さんに医療と看護を提供しているんです。この術野を守る一員です。この命に携わる一員です。
 そこに看護師としての重きを置いてくれるのがこの先生です。

「むっちゃ〜〜〜ん、この手術一緒にしょうやぁ〜〜〜」

    ↑この先生が呼ぶ私の呼び名です

「今日もよろしくね〜〜

 相変わらずの間の抜けた口調といつもの笑顔がもう手術室に花開くことはないのだと思うと、無性にあの時間が懐かしく成ります。

 閉腹を終えた後の

「ご苦労さん。」

 も、

「今日は予定より早く終わったよ〜、ありがとさん。」

 も、

 今となっては夢のような時間だったのだと気付きます もう聞くことはない、もう見ることはない・・・人間の人生の中にはそう言ったものが一杯あります。決してこの手の中にいつまでもあるものはないのだと。

 医療に携わると、人の死以外にも、こうした別れがどんな職場よりも多いと気付きます。そんな出会いと別れの中で、私が働いた10年間変わらなかった人との関係が、今日から変わります。
 
 私を手術室看護師として育ててくれた先生です。

 怒られながら、励まされながら、それでもお互いの手癖を覚えて行った仲です。

 この先生に「ありがとねー」と言われることは簡単でした。

 「お疲れさん。」と声をかけられることも簡単でした。

 それ程、この先生は人を見、人を思い、人を大切にする先生でした。



 けれど、この先生に「全てを出し切った。」と言わせる事は出来ませんでした。

 上を目指し、いつも追いすがって来る後輩の為を思う先生でした。

 その為に自分の技量の20%を殺しても、笑顔で「お疲れさん」と言う先生でした。

 100%の技術を、そして120%の外科医療を、私はこの先生にさせてあげられたことはないんです。

 なのに先生は笑っていました。

「こんなにも人に惜しまれて行く事が出来るなんてね・・・・。」

 先生の中に眠る100%の外科医としての技術。
 これから別の病院で発揮することが出来るといいですね。

 先生は、最後の挨拶で言いました。

「結局は『人』。医師も看護師もコメディカルも、肩書きはあっても『人』。」

 医師と患者、看護師と患者ではなく、人と人なのだと。人が人の為に何かしたいと考える、それはとても高尚な事。そしてそれが、人とのつながりを強め、医療の向上につながる・・・・。

 いつだって患者さんと共に歩いてきた先生です。どの部分を切り取っても、その白衣の横には患者さんがいました。逝く命にも、生きる命にも、同じように真摯であり、同じように諦めず、同じように心を砕いた先生でした。
 
 病院を去る先生は私に言いました。

「この歳だから名前は忘れるかもしれないけれど、いつ会っても絶対、顔は覚えているからね。」

 そうだね、先生

 私の事最近あんまり名前で呼ばなくなったもんね

 「うまうまさん。」じゃなくて、「むっちゃん、むっちゃん!」って。

 でも私、そういって呼ばれるの、嫌いじゃなかったです。
 5年たってやっと、チームの一員になれたと思っていたのに。

 いつも柔らかだった先生の右手と交わした最後の握手は、とても強い力でした。

 決して若いとはいえない先生の転勤は、これからきっと大変なこともあると思う。それでも「ありがとう。」じゃなく、一人ひとりに「頑張ってよ!」と声をかけて行く先生の人柄が、私は大好きでした。
 人の事よりも、今は自分の事を考えてくれてもいいのに

 身体に気をつけて、良い船出を・・・・

                       

 医者になって働き始めた頃、忙しいのが当たり前だったし、兎に角忙しくても何故か充実していたと話す先生。うちの病院に20年前に赴任してきて、余りにも暇すぎて「どうしよう!?こんなんでいいのか!?」と思っていたそう。

 そして、その思いはこの20年、ずーっと同じ思いで胸の中にあったといいます。

 このままで自分はいいのだろうか?やりたい事は出来ているんだろうか?

 自問自答しながら20年経ったといいました。けれど、その20年は決して無駄ではなかったし、20年同じ病院で働いていけたのも、周りが自分を引き上げてくれたからだと話してくれました。
 やりたいことが見つからない、やりたい事をやれていないままなんじゃないかと苦悩しながらの20年は、ある意味決して楽ではなかったと思います。理不尽なこともあったと思います。それでも先生は、うちの病院で20年を過ごしたこと、それはとてつもなく素晴らしい思い出だと言われます。
 人はお金で動くのではない・・・この病院にそれだけの価値があったからこそ、働けていたのだと話します。その「価値」とは、私たち『人』であると

 ふと思いました。この話、あの小児科の先生にも聞かせてあげたいなと。
 一人で頑張り続けているような先生だからね・・・。
 やりたい事が見つからないと零していた先生だからね・・・・。
 
 看護師になって良かったなと思う瞬間でもありました。人とのつながりをこんなにも身近に、リアルに感じられる職場です。出会いと別れが多いのは確かです。涙の数も多い代わりに、笑顔も多く、絆も多いです。
 自分が人の為に頑張れる職場です。
 誰かの笑顔の為に、誰かの幸せの為に頑張れる職業です。

 そしてそれは、決して患者さんという対象だけでなく、すぐ傍にいる人にも同じように。

 先生にも、後輩にも。

 同時に、相手の頑張りを見つめてあげられる、見守ってあげられる職場でもあります。

 医療は、人の力がなければありえない職場。

 一台の車を機械が全部作るとしても可笑しくない現代でも、人の力以上のものなどない職場です。

 私たち一人ひとりが持つ、力の大きさに気付かされる一日でした。

 音楽の力

 言葉の力

 芸術の力

 色んなものに力は宿っています。

 けれど何より強く暖かいのは、人の笑顔だったりするんです。



 もう、外科医と術野で向き合うことはありません。

 手術が終わったときの安堵の笑顔、患者さんを覗き込み「終わったよ〜」と言うトボケたような口調、カラフルな手術記録、手術中後輩医師を怒鳴り散らす威勢の言い暴言も、かといえばくだらないおしゃべりも・・・。

 いつまでも在ると思っていたのに、全ては明日から『思い出』に変わります。




 もう二度と巡り来ることのない、素晴らしい時間でした


   

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